ダム用語解説


基本的なダム用語辞典です。このサイトで分からない単語があったら、まずここをチェックしてみてください。50音順に並べてあります。下の頭文字ボックスから飛ぶことができます。

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ダム用語解説ですが、素人にはひとつひとつの単語を解説しているような文献を見つけることは不可能で、完成にはダム専門家の方々の知識が必要と考えています。添削や用語の新規追加など、ネット上でもなかなかない「ダム用語辞典」の製作に協力していただけませんか?協力してくださる場合は、用語と簡単な解説を、お気軽にメールでお送りください。一般でも分かるような、基本的な用語だけでOKです。

注:ダムの種類、用途などの解説は「ダムの基礎知識」ページをご覧ください。






おりふぃすげーと(オリフィスゲート)
ダムの常時満水位から水深25m未満の場所に設けられた放流ゲート。主にダム湖の水位や下流の流量の調節に用いられる。


かりはいすいとんねる(仮排水トンネル)
ダムを建設するために川を閉め切っても、上流から流れてきた水は下流に流す必要がある。そのため建設工事に先立ち、工事現場を迂回させて上流と下流をつなぐトンネルが掘られる。これを仮排水トンネルという。ダム本体が完成するとトンネルの入口が閉め切られ、いよいよ貯水が開始される。
 
きゃっとうぉーく(キャットウォーク)
ダム堤体表面に設置された管理用通路のこと。アーチ式コンクリートダムでよく見かける。当然ながら一般人が立ち入ることはできないが、ダムマニアならいつかは歩いてみたいところ。
 
ぎゃくちょうせいち(逆調整池)
上流に大規模な水力発電所がある河川は、昼間の発電のピーク時に流量が増えたり、夜間の貯水時は流量が少なくなったりしてしまうため、発電所の下流にもう一つダムを造って貯水し、一定の量を放流することによって下流の流量を安定させている。これを逆調整池という。
 
くれすとげーと(クレストゲート)
ダム堤頂部に設置されたゲート。主に非常用洪水吐に用いられる。形式はローラーゲートかラジアルゲートが一般的。
 
げーと(ゲート)
水門。ダムでは湖や下流の流量調節のために設置される。目的や形式などによって様々な呼び名があるので、混同しないよう注意が必要だ。
 
げんせいこう(減勢工)
ダム直下に副ダムを造りそこに水を貯めることによって、ダムからの放流で河床部を削られないようにしたり、放流された水がそのままの勢いで下流に流れないようにするためのものを総称していう。副ダムとは言っても、主ダムが巨大だとそれに比例して20〜30mの大きさになるものもある。
 
こうずい(洪水)
ダム用語での洪水は、通常単位時間あたりに上流からダムに流れ込んでくる流量が普段よりも多い場合をいい、河川が氾濫しなくても洪水「状態」になる。
 
こうずいきせいげんすいい(洪水期制限水位)
洪水調節の目的を持つダムでは洪水期(主に6月〜10月)の間、洪水調節容量を大きくとるため、常時満水位よりも水位を下げて洪水に備える場合の水位をいう。
 
こうずいちょうせつようりょう(洪水調節容量)
サーチャージ水位から洪水期制限水位を引いた量。つまりそのダムで洪水時にキャッチできる水量。
 
こうずいばき(洪水吐)
ダムの水があふれそうになった場合や、ダム湖や下流の水量調節のために、ダムの水を下流に流す設備のこと。
通常の水量調節で使用するものを「常用洪水吐(じょうようこうずいばき)」、洪水など緊急時にダムの水位を下げるためのものを「非常用洪水吐(ひじょうようこうずいばき)」という。それぞれゲート式のものや、ゲートがない自然越流式のものがある。


さーちゃーじすいい(サーチャージ水位)
洪水時に常時満水位を超えて一時的に貯水する最高の水位をいう。
 
しけんたんすい(試験湛水)
ダムが完成した後、強度や安全性、機能の確認のために行なう試験で、一度サーチャージ水位まで貯水し、また最低水位まで減水させる。この際ダムに異常が出ないか各種点検や計測が行なわれる。ダムの規模や天候などにもよるが、通常1年近くかかる。
 
じょうじまんすいい(常時満水位)
通常のダム運用で維持しようとする最高水位のこと。洪水期は洪水調節容量を大きくとるためにこれより水位が下げられる。
 
すいりけん(水利権)
河川などの水を利用する権利。ダムの水利権は、農業用水、水道用水、工業用水などに分かれている。また河川法に基づき、許可を得た許可水利権と慣行によって成立している慣行水利権とがある。
 
そうちょすいようりょう(総貯水容量)
計算上、ダムに貯めることができる水の最大量。実際は土砂が堆積したりするので確保できない。


たんすいめんせき(湛水面積)
常時満水位時のダム湖の水面の面積をいう。
 
ていこう(堤高)
ダムの基礎地盤から一番上までの高さのこと。河川法ではこれが15m以上のものをダムと呼ぶ。
 
ていたいせき(堤体積)
ダム本体の体積。ダムは種類によって構造が大きく異なるので、堤体積だけで大きさを比べることはできない。
 
ていちょう(堤長)
ダムの堤頂部における右岸と左岸の距離。
 
どうりゅうぶ(導流部)
洪水吐などから放流された水が正しく流れるように導くための水路。ダム下流側の越流部から減勢工までの間を指すことが多い。



ひょうめんしゅすいせつび(表面取水設備)
発電や水道用水など、通常の運用でダム湖の水を下流に放流する場合、低層の水では温度が低すぎて作物や生物に被害をもたらしてしまうため、ダム湖表面から取水する。そのための設備をいう。ダムの水位は常に変化するため、どんな水位にも対応できるよう可動式のゲートやフロート式のものがある。



ゆうこうちょすいようりょう(有効貯水容量)
ダムに最大貯められる量をあらわす総貯水容量から、予想される土砂の堆積量(堆砂容量)、ダムの構造上使用できない水量(死水量)を引いた貯水容量。ここから実際に使われる水量が水利権に基づいて割り振られる。


らじあるげーと(ラジアルゲート)
扇型のゲートを、扇の中心を支点として回転(上下)させ開閉する構造のゲート。高い水圧にも耐えられ、また上下方向の動きを小さくすることが可能。
 
りっぷらっぷ(リップラップ)
ロックフィルダムにおいて、堤体の表面に堤体保護や景観美のために石を張りつめたもの。
多くの石を重機を使ってパズルのように張り合わせていき、美しいリップラップを造るのは大変な労力とセンスを要求される。業界にはリップラップ専門の職人が存在し、優秀な職人は同じ現場監督のもと、全国のロックフィルダム工事現場を渡り歩いているとのウワサだ。
 
ろーらーげーと(ローラーゲート)
スライドゲートと同じく板が上下する構造だが、こちらは板を支えている溝の部分にローラーがついているため、高い水圧がかかった状態でもスムーズに開閉ができる。主にクレストゲートで使用される。また河川に設置された可動堰などもこのタイプが多い。


参考文献:土屋昭彦編「河川・ダム・砂防用語辞典」山海堂  
     水門鉄管協会編「水門鉄管技術用語集」水門鉄管協会